・・・この点は、とくに第二次世界大戦後の精神における顕著な動向である。人類の文化において、第二次世界大戦後、個人主義が地盤を縮小したということは、個人や個性が消滅したということではなくて、真に個性や価値や自由な発展を確保するためには、その個人の生・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ここにたとえて云えば「現代学生の動向」という題があったとする。決してジャーナリスティックでもないし、文学的でもない題だと思う。謂わばこちたき題名で、そこに著者が肩書つきであらわれていれば、随分と取締の立場も感じられる題の一つである・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・ 食べたいものの第一は支那料理の白菜羹汁だ。それからふろふき大根。湯豆腐。 特徴ある随筆の筆者斎藤茂吉氏は覊旅蕨という小品を与えた。 同行二人谷譲次氏は新世界巡礼の途についた。そして Mem タニが女性の適応性によって、キャパン・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ やいたと云っては口惜しいから、道徳的にどうこういう。 顔で行かず、心で行こうという見えざるコケット ○「男は、女を愛す、と平気で云う。女だって同じと思うわ、それを何故私は男の人がすきよと云えないの、云っちゃあいけないのでしょう・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
一九四七年の文学の動向として大へん目立つことは大体三つあると思います。 その一つは、一九四六年中は戦争に対する協力者としての活動の経験から執筆をひかえていたどっさりの作家が、公然と活動をはじめたことです。これは日本の政・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・ 『新日本文学』の業績と課題 さて、このように錯綜し、紛糾している今日の文学の動向の間にあって、『新日本文学』はこの一年に、どういう文学的創造能力を発揮してきたでしょう。 新日本文学会としての組織活動の成果・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・中国文化に対する私共作家の理解は、何卒そういう感を、進歩的であり誠実である中国の人々に抱かせないですむぐらい正確且つ健全な歴史性の動向に沿ったものでありたいと思う。例えば芥川龍之介氏の支那游記と、〔十三字分伏字〕とでは、既に文化の感情が本質・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・ ジャーナリズムは夥だしい功罪ともども読者を捕えてゆくのではあるが、そのためには読者の人間的社会的意欲の動向を敏活にとらえ反映して展開させなければジャーナリズムは実利上にも成立たない。ここに、現代ジャーナリズムに対する読者の声、要求の深・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・作家と読者との相関のいきさつのなかに文学の動向の諸相を明らかにしてゆく現実の作用は喪われて、批評はそれを書くひとの主観の流れに応じて肆意的に自身の渦巻きを描くものとなった。批評の論理性の喪失、その随筆化ということがその頃一般の注目をひいたの・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・今日及び明日の作家には、文学の大道から、今日おびただしい犠牲を通じて行われている心を痛ましめる衝突と一刻も早く望まれる最善の解決とを、歴史性の動向につき入って観察し描破しようとする熱意、力量の蓄積、鍛練が希望されている筈である。 ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫