・・・祖母の話を物陰から聞いた事、夜になって床に入ってから、出願を思い立った事、妹まつに打ち明けて勧誘した事、自分で願書を書いた事、長太郎が目をさましたので同行を許し、奉行所の町名を聞いてから、案内をさせた事、奉行所に来て門番と応対し、次いで詰衆・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・伴奏ともなれば同行ともなる。「銀座であなたにお目にかかったといったら、是非お目にかかりたいというの」「まっぴらだ」「大丈夫よ。まだお金はたくさんあるのだから」「たくさんあったって、使えばなくなるだろう。これからどうするのだ」・・・ 森鴎外 「普請中」
・・・上等、中等の室に入りて、切符しらぶるにも、洋服きたる人とその同行者とは問わずして、日本服のものはもらすことなかりき。また豊野の停車場にては、小荷物預けんといいしに、聞届けがたしと、官員がほしていいしを、痛く責めしに、後には何事をいいても、い・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫