・・・また朝鮮で「ナル」は山であるがこれであるかもしれない。御畳瀬 「ピパ」牡蠣の種類。「シ」は在所。「セッ」巣。北海道に地名ビバウシがある、バチェラーはやはり「貝のある所」と解している。bがmに変るのは普通だからこれは同じものらしい。仁・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・また朝鮮で「ナル」は山であるがこれであるかもしれない。御畳瀬 「ピパ」牡蠣の種類。「シ」は在所。「セッ」巣。北海道に地名ビバウシがある、バチェラーはやはり「貝のある所」と解している。bがmに変るのは普通だからこれは同じものらしい。仁・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・わたくしは此のたびの草稿に於ては、明治年間の東京を説くに際して、寡聞の及ぶかぎり成るべく当時の人の文を引用し、之に因って其時代の世相を窺知らしめん事を欲しているのである。 松子雁の饒歌余譚に曰く「根津ノ新花街ハ方今第四区六小区中ノ地ニ属・・・ 永井荷風 「上野」
・・・民偕ニ之ヲ楽ンデ其大ナルヲ知ラズ。京中都人士ガ行楽ノ地、実ニ此ヲ以テ最第一トナス。」 上野の桜は都下の桜花の中最早く花をつけるものだと言われている。飛鳥山隅田堤御殿山等の桜はいずれも上野につぐものである。之を小西湖佳話について見るに、「・・・ 永井荷風 「上野」
・・・民偕ニ之ヲ楽ンデ其大ナルヲ知ラズ。京中都人士ガ行楽ノ地、実ニ此ヲ以テ最第一トナス。」 上野の桜は都下の桜花の中最早く花をつけるものだと言われている。飛鳥山隅田堤御殿山等の桜はいずれも上野につぐものである。之を小西湖佳話について見るに、「・・・ 永井荷風 「上野」
・・・老樹の梢には物すごく鳴る木枯が、驚くばかり早く、庭一帯に暗い夜を吹下した。見えない屋敷の方で、遠く消魂しく私を呼ぶ乳母の声。私は急に泣出し、安に手を引かれて、やっと家へ帰った事がある。 安は埋めた古井戸の上をば奇麗に地ならしをしたが、五・・・ 永井荷風 「狐」
・・・抑是ノ酒肆ハ浅草雷門外ナル一酒楼ノ分店ニシテ震災ノ後始テ茲ニ青ヲ掲ゲタルモノ。然ルガ故ニ婢モ亦開店ノ当初ニ在リテハ浅草ノ本店ヨリ分派セラレシモノ尠シトナサヾリキ。今ヤ日ニ従テ新陳代謝シ四方ヨリ風ヲ臨ンデ集リ来レルモノ多シ。曾テ都下狭斜ノ巷ニ・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・抑是ノ酒肆ハ浅草雷門外ナル一酒楼ノ分店ニシテ震災ノ後始テ茲ニ青ヲ掲ゲタルモノ。然ルガ故ニ婢モ亦開店ノ当初ニ在リテハ浅草ノ本店ヨリ分派セラレシモノ尠シトナサヾリキ。今ヤ日ニ従テ新陳代謝シ四方ヨリ風ヲ臨ンデ集リ来レルモノ多シ。曾テ都下狭斜ノ巷ニ・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・蜀黍が少しがさがさと鳴るように聞えた。太十は蚊帳を透して見た。其時月はすべてが熟睡した頃とこっそり姿を現わしかけて居た。畑がほのかに明るくなりかけた。太十は動くものを認めた。彼の怒は彼の全心を掩うた。彼は後の方からそっと蚊帳を出た。尚前方を・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・一段畢ると家の内はがやがやと騒がしく成る。煙草の烟がランプをめぐって薄く拡がる。瞽女は危ふげな手の運びようをして撥を絃へ挿んで三味線を側へ置いてぐったりとする。耳にばかり手頼る彼等の癖として俯向き加減にして凝然とする。そうかと思うとランプを・・・ 長塚節 「太十と其犬」
出典:青空文庫