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・・・そして下大和橋のたもとの、落ちこんだように軒の低い小さな家では三色ういろを売っていて、その向いの蒲鉾屋では、売れ残りの白い半平が水に浮いていた。猪の肉を売る店では猪がさかさまにぶら下っている。昆布屋の前を通る時、塩昆布を煮るらしい匂いがプン・・・
織田作之助
「アド・バルーン」
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・・・追って家督相続をさせた後に、恐多いが皇室の藩屏になって、身分相応な働きをして行くのに、基礎になる見識があってくれれば好い。その為めに普通教育より一段上の教育を受けさせて置こうとした。だから本人の気の向く学科を、勝手に選んでさせて置いて好いと・・・
森鴎外
「かのように」