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・・・長い艶々した天鵞絨よりも美くしい毛並と、性質が怜悧で敏捷こく、勇気に富みながら平生は沈着いて鷹揚である咄をして、一匹仔犬を世話をしようかというと、苦々しい顔をして、「イヤ、貰う気はしない、先妻が死んで日柄が経たない中に、どんな美人があるから・・・
内田魯庵
「二葉亭余談」
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・・・ ところが或る日柄にない力にまかいてこれぞと云う目あてものうて朝早くから飛び出いた。神の御社を下に見ながら大きな御館の上を越して飛んでまいるうちに天気が急にかわっていかい大風になって参ったので小鳥はそのかくれ家を求めて居るとすぐそばに己・・・
宮本百合子
「胚胎(二幕四場)」