・・・そのためについビールも一本失礼いたしました。そしてそのお蔭でやっとおもいだしました。あれは現今西根山にはたくさんございます。私のおやじなどはしじゅうあれを掘って町へ来て売ってお酒にかえたというはなしであります。おやじがどうもちかごろ紫紺も買・・・ 宮沢賢治 「紫紺染について」
・・・それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがった、しずかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。 子どもは、やどりぎの枝をもって、一生けん命にあるきだしました。 けれども、その立派な雪が落ち切ってしまったころから・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
一、ペンネンネンネンネン・ネネムの独立 〔冒頭原稿数枚焼失〕のでした。実際、東のそらは、お「キレ」さまの出る前に、琥珀色のビールで一杯になるのでした。ところが、そのまま夏になりましたが、ばけものたちはみんな騒ぎ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・そして、そういうことをする者があるから、はたが困るよと云いながら、どういうわけか、頻りに腹がわるいんならこれに限ると紙コップについだビールを対手に押しつけてすすめていた。〔一九三八年一月〕・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・そして、そういうことをする者があるから、はたが困るよと云いながら、どういうわけか、頻りに腹がわるいんならこれに限ると紙コップについだビールを対手に押しつけてすすめていた。〔一九三八年一月〕・・・ 宮本百合子 「くちなし」
○長や 玉やの玉のブつかる音。小さい家から一日じゅうラジオか、やすチク音キがきこえる。窓からとび込んで来る猫。葬儀やの二階の講。台所にタライにビールをつけてある。ベコベコジャミセン○物干しに出て、どじょうすくいを踊るのを・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・ この時すぐに目を射たのは、机の向側に夷麦酒の空箱が竪に据えて本箱にしてあることであった。しかもその箱の半以上を、茶褐色の背革の大きい本三冊が占めていて、跡は小さい本と雑記帳とで填まっている。三冊の大きい本は極新しい。薄暗い箱から、背革・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・「勘よ、うちにビール箱が沢山あったやろが、あれで作ったらどうやろな?」とお霜は云い出した。 秋三はにやにや笑いながら、「そいつは好え。あれなら八分板や、あんなもんでして貰うたら、それこそ極楽へ行きよるに定ってる。やっぱり伯母やん・・・ 横光利一 「南北」
・・・「勘よ、うちにビール箱が沢山あったやろが、あれで作ったらどうやろな?」とお霜は云い出した。 秋三はにやにや笑いながら、「そいつは好え。あれなら八分板や、あんなもんでして貰うたら、それこそ極楽へ行きよるに定ってる。やっぱり伯母やん・・・ 横光利一 「南北」
・・・食事のときも、集っている将校たちのどの顔も沈鬱な表情だったが、栖方だけ一人活き活きとし笑顔で、肱を高くビールの壜を梶のコップに傾けた。フライやサラダの皿が出たとき、「そんな君の尉官の襟章で、ここにいてもいいのですか。」と梶は訊ねてみた。・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫