・・・ 付言 以上は自分の自己流の俳句観である。現代俳壇の乱闘場裏に馳駆していられるように見える闘士のかたがたが俳句の精神をいかなるものと考えていられるかは自分の知らんと欲していまだよく知りつくすことのできないところである・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・其愛情は不言の間に存して天下の親子皆然らざるはなし。啻に出産老病の一事のみならず、人間の子にして父母を親しみ父母を慕い、父母にして子を愛し子を親しむは、天性の約束なるに、女子が他家に嫁したればとて、実の父母を第二にして専ら舅姑の方を親愛し尊・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・第二には、仮令え不言の間に自ずから区別する所ありとするも、その教えの方法に前後本末を明言せずして、時としては私徳を説き、また時としては公徳を勧め、いずれか前、いずれか後なるを明らかにせざるがために、後進の学者をして方向を誤らしむるにあり。然・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・若い良人でもある兄も、若く美しい新妻であった母も、不言の裡に、この熱烈な気質の弟の決心の動機を理解していたと思える。それが奇矯ではあるが純潔なろうとする意志によっていることや、アメリカほど遠い海を踰えてしまわなければ、そしてやがてはその大き・・・ 宮本百合子 「本棚」
出典:青空文庫