・・・月給で自分が食べたり、家庭を扶助したりしている女はとかくうるさい、月給なんかなしでも何か仕事をしたいという娘がこの頃は相当沢山いる、そういう女でもさがそうじゃないか。そういう言葉が平然といわれている状態です。若い女のひとの興味趣味などに沿う・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・として意識されるものになって来ているし、そのコンプレックスは、ドイツの若い婦人に対してヒトラーの政府が利用したようなものとしてあらせてはならないし、日本軍隊の婦女暴行としてくりかえされてもならないという意識も、明瞭に意識されて来ている。した・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・民法は、事情によって父親が受ける月給の半額までの扶助料を子供が十八歳になる迄支払う義務を決定している。 万一、男が更に非ソヴェト市民的で、扶助料支払いをいやがり、行衛をくらました時、例えばターニャはどうするか。彼女ひとりの収入ではとても・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 其だから、何か良人の欠点を掴って、其を訴訟の材料として扶助料を取った方がよいと思う。其処で、彼女は嘗ては愛情を表現するのに、どうしたらよいだろうと思いなやんだ同じ胸で、今度は、どうしたら、彼を怒らせ、自分に手をあげさせ、その挙げたまま・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・住居のこと、収入と物価、夫婦二人のほかに家庭的な扶助の責任の問題。共稼ぎの必要、その必要には余り不備な今日の社会施設。もし健康に自信のない妻であるならば、共稼ぎと主婦の労苦を二重に負って病気したとき、その不安は誰が分担してくれるであろう。・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・町人文学と劇、浮世絵は、封建の身分制から政治的に解放され得なかった人間性が、金の前には身分なしの人身売買の世界で悲しくも主張されたわけでした。婦女奴隷の上に悲しくも粉飾された町人の自由と人間性との表示でした。 明治四十年代の荷風のデカダ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・そして、私の忠実な僕の芸術家達は、巫女のような洞察で天と人類とのゆきさつを感じ、様々な形で生存の真髄を書きとめ刻みつけ彩って行くのです。……さあ、それでは出かけて、もう一まわり、独特な鼓舞で励ましておやり。仕事は辛い。なかなか容易には捗取ら・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・春桃は、深い伝統の波の底にあって、しかも習俗の形に支配されきってはしまわない一個的婦女として、自覚しない独立の本能に立って見られていることも深い深い意味を感じる。あまりの貧しさ、貧しさ極った無一物から漂然とした従来の中国庶民の自由さとちがっ・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・婦人雑誌の表紙や口絵が、働く女を様々に描いてのせる風潮だが、その内容は軍事美談や隣組物語のほかは大体やっぱり毛糸編物、つくろいもの、家庭療治の紹介などで、たとえば十一月の婦女界が、表紙に工場の遠景と婦人労働者の肖像をつけていて内容はというと・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・ たとい若し、彼女の最初の婚約が全然絶望的なものと成った当時、既に、自力によって一定の収入を得る総ての女性間に、経済的相互扶助機関が確立しているとしたら、どうなったでしょう。 収入の幾割かを皆が積立てて、その適当な運用、利殖によって・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
出典:青空文庫