・・・ おみささんは、変に極りのわるいような、口惜しそうな、ぷりぷりした調子で素気なく答えた。「ほんに、何ちゅう人たちだら……今朝ねあなた、お宅からかえって、そうっとまた裏の窓からのぞいて見たら……寝てるじゃあござせんか」「へえ……そ・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・やや暫くして、骨はとれずぷりぷりして帰って来た。洋館まがいの部屋などあるが、よぼよぼのまやかし医者で、道具も何もなく、舌を押えて覗いては考え、ピンセットを出しては思案し、揚句、この辺ですか、とかき廻されたのでやめにして来た由。「一円とられた・・・ 宮本百合子 「金色の秋の暮」
・・・あのぽっちゃりした受口に癇を立てて、ぷりぷりしながら沈んでいる姿まで思いやられるのであった。 傍で話をきいていて、すぐ死んでしまうとも思えない。さりとて、ストライキの時の確りした友達のところへ駈け込んで、もう二度と家へかえらず新しい生活・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 私は、却って彼女のそのぎごちない、少女らしいぷりぷりした処に愛を感じた。若し、思い設けなかった愛嬌で媚び笑いながら、彼女に今夜花束をすすめられたら、私は寂しくなり、恐らく買わずに過たろう。私がいつもあの婦人帽をよけて通るように。 私は・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
・・・とそれを楯に動こうとせず、先着の一人が化粧の顔に怒気を浮べて、わたしはひとの席までとっては、よう座りませんからと啖呵を切るようにしたら、守衛も、ここのところは先着の人に坐らして下さいと仲に入り、二人はぷりぷりして出てゆき、少なからず興奮した・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫