・・・赤いべべを着たお人形さんや、ロッペン島のあざらしのような顔をした土細工の犬やいろんなおもちゃもあったが、その中に、五、六本、ブリキの銀笛があったのは蓋し、原君の推奨によって買ったものらしい。景品の説明は、いいかげんにしてやめるが、もう一つ書・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・この顔が――くどいようだが――楊貴妃の上へ押並んで振向いて、「二十だ……鼬だ……べべべべ、べい――」 四 ここに、第九師団衛戍病院の白い分院がある。――薬師寺、万松園、春日山などと共に、療養院は、山代の名勝に・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・「このべべ何としたんや」と言って濡れた衣服をひっぱってみても「知らん」と言っている。足が滑った拍子に気絶しておったので、全く溺れたのではなかったとみえる。 そして、なんとまあ、いつもの顔で踊っているのだ。―― 兄の話のあらましは・・・ 梶井基次郎 「城のある町にて」
・・・「兄さんなぜあたいの青いおべべ裂いたの。」チュンセはびっくりしてはね起きて一生けん命そこらをさがしたり考えたりしてみましたがなんにもわからないのです。どなたかポーセを知っているかたはないでしょうか。けれども私にこの手紙を云いつけたひとが・・・ 宮沢賢治 「手紙 四」
・・・ 猿芝居舞台の下からつまだててそっとのぞいた猿芝居釣枝山台 緋毛せん灯かげはチラチラかがやいてほんにきれいじゃないかいナシャナリシャナリとねって行く赤いおべべの御猿さんかつらはしっくりはまっ・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
出典:青空文庫