・・・友代の方言がうまいというばかりでなく心もちのニュアンスをつたえる表現としてこなされていたのは心持よいことであった。 そして、友代の成功であの芝居が真情的なものに貫かれていたとも云えそうなところに脚本としていろいろ興味ある問題がひそんでい・・・ 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・などの作品にもふれることであるが、われわれは広汎な意味でのプロレタリア文学における自然描写の問題、方言の問題などについてもリアリズムの理解を一層深めなければならない。私はこの力作の検討の上に立って作者がさらに健康な発展に向うことを切望してや・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ 私共は、斯様な放言に対して、総ての女性の尊厳の為に飽くまでも申さなければなりません。斯様な批評を下す人は従来日本の女性が魂まで殺戮されて来た半婢半娼の待遇を、家長――男性の女性に対すべき態度だと思い、その無自覚な沈黙と奴隷的な服従とを・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・石川達三氏は、今日の人民的な民主主義をうちたてようとしているすべての正直な人々の努力の真只中でこういう放言をしながら、四国地方の反動団体の巻頭言などを書いています。 また先日日比谷で行われたユネスコの大会で、ユネスコ文学のことについて演・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・尾崎行雄は年甲斐もなく亢奮して、日本の国語が英語になってしまわなければ、日本で民主精神なんか分りっこないと放言しているのには、日本のすべての人がおどろいた。元来民主主義は英語の国から来たものだからだそうだ。 カクテール・キングとあだ名さ・・・ 宮本百合子 「長寿恥あり」
・・・私として飾りなく云うと、こういう紙面でのあい対がおのずから期待している性質を正しく活かすために、例えば私などよりより深く見られるところに貴方がおられる或る種の文学放言などに対し社会的な意味を自覚している作家としての立場から公然たる一言を見出・・・ 宮本百合子 「不必要な誠実論」
・・・田舎暮しからみたら東京の生活は比較にならないほどいい、と云われる言葉は、都会の空気に代々馴れて、結核なども陽性反応を示す体質になっている人々の放言である。 勤労青少年たちの体はよくない。中国地方の或る工業地帯が故郷である若い人が、この間・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
・・・一体この土地には限らず、方言というものは、怒って悪口を言うような時、最も純粋に現れるものである。目上の人に物を言ったり何かすることになれば、修飾するから特色がなくなってしまう。この女の今しゃべっているのが、純粋な豊前語である。 そこで内・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・そして、さっそく色紙へ、「方言のなまりなつかし胡瓜もみ」という句を書きつけたりした。 栖方たちが帰っていってから十数日たったある日、また高田ひとりが梶のところへ来た。この日の高田は凋れていた。そして、梶に、昨日憲兵が来ていうには・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫