・・・ しかし鳥獣をうらやんだ原始人の三つ子の心はいつまでも生き延びて現代の文明人の社会にも活動している。蛾をはたき落とす猫をうらやみ賛嘆する心がベースボールのホームランヒットに喝采を送る。一片の麩を争う池の鯉の跳躍への憧憬がラグビー戦の観客・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・ しかし鳥獣を羨んだ原始人の三つ子の心はいつまでも生き延びて現代の文明人の社会にも活動している。蛾をはたき落す猫を羨み讃歎する心がベースボールのホームランヒットに喝采を送る。一片の麩を争う池の鯉の跳躍への憧憬がラグビー戦の観客を吸い寄せ・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ 思い切った事をお主は御云いなされた――コレ若い人、お主はそれをほんの心で聞いては大した事が出来ぬともかぎらぬ、じょうだんだと聞き流され、三つ子の云うた事だと思って居なされナ?第三の精霊 私のほんの心できいてもなにも大した事等は起らぬ、・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・ 三つ子が百度も聞いた桃太郎の話をあきもしないで、いくどでもきく様な気持の人達はあきもしないで同じ様な事を書いたのをよみます。 そして又いかにもその人達にとっては少女小説と云うものが大した魅力を持って居るんです。 どこまでもそれ・・・ 宮本百合子 「現今の少女小説について」
・・・それは教育でもなければ、また時代の影響でもない、三つ子の魂そのものです。これは各個人によって違っているものであるから、真実まことの自分を各自は考えなければなりません。此処に於て初めて、或る時代に一人の人間が生きているということになるのです。・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・ 爺は、その大きな、私の頭なんかは一つかみらしい変に太くて曲った指のある手で私の手をひっぱり、三つ子を歩かせる様に私を家へつれ込んだ。 この様子を見ると先ず笑ったのは女中で、怒りもならない顔をして祖母は、「まあ何て事だえ・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫