・・・うむ買うよ買うよとやはり頬杖を突いたままで、むにゃむにゃ云ってるうちに三重吉は黙ってしまった。おおかた頬杖に愛想を尽かしたんだろうと、この時始めて気がついた。 すると三分ばかりして、今度は籠を御買いなさいと云いだした。これも宜しいと答え・・・ 夏目漱石 「文鳥」
・・・ カン蛙はなんとも言えないうらめしそうな顔をして、口をむにゃむにゃやりました。実はこれは歯を食いしばるところなのですが、歯がないのですからむにゃむにゃやるより仕方ないのです。二疋はやっと手をはなして、しきりに両方からお世辞を云いました。・・・ 宮沢賢治 「蛙のゴム靴」
・・・ 狸はむにゃむにゃ兎の耳をかみながら、「なまねこ、なまねこ、みんな山猫さまのおぼしめしどおり。なまねこ。」と云いながら、とうとう兎の両方の耳をたべてしまいました。 兎もそうきいていると、たいへんうれしくてボロボロ涙をこぼして云い・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
・・・そこでテジマアは、ナイフをとり上げて皿の上のばけものを、もにゃもにゃもにゃっと切って、ホークに刺して、むにゃむにゃむにゃっと喰ってしまいました。 その時「バア」と声がして、その食われた筈の若ばけものが、床の下から躍りだしました。「君・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫