・・・ 三味線背負った乞食坊主が、引掻くようにもぞもぞと肩を揺ると、一眼ひたと盲いた、眇の青ぶくれの面を向けて、こう、引傾って、熟と紫玉のその状を視ると、肩を抽いた杖の尖が、一度胸へ引込んで、前屈みに、よたりと立った。 杖を径に突立て突立・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・ 五 その鯉口の両肱を突張り、手尖を八ツ口へ突込んで、頸を襟へ、もぞもぞと擦附けながら、「小母さん、買ってくんねえ、小父的買いねえな。千六本に、おなますに、皮剥と一所に出来らあ。内が製造元だから安いんだぜ。大・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・ そこを両脇、乳も、胸も、もぞもぞと尾花が擽る! はだかる襟の白さを合すと、合す隙に、しどけない膝小僧の雪を敷く。島田髷も、切れ、はらはらとなって、「堪忍してよう、おほほほほ、あははははは。」 と、手をふるはずみに、鳴子縄に、く・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・が、それ以上に、坂田は随いて来たことを、はじめから後悔していたのだ。もぞもぞと腰を浮かせていたが、やがて思い切って、坂田は立ち上った。「お先に失礼します」 伝票を掴んでいた。「ああそらいかん」 松本はあわてて手を押えたが、坂・・・ 織田作之助 「雪の夜」
出典:青空文庫