[接助]《形式名詞「もの」+形式名詞「ゆえ」から》活用語の連体形に付く。
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1 理由・原因を表す。…だから。…ので。「どうしても行かれぬ—、よろしく伝えていただきたい」
「悔しきことやうやうまさりゆけど、今はかひなき—、常にかうのみ思はば」〈源・早蕨〉
「待つ人も来ぬ—にうぐひすの鳴きつる花を折りてけるかな」〈古今・春歌下〉
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2 逆接の確定条件を表す。…ではあるが。…なのに。…けれども。
「波の間 (ま) ゆ雲居に見ゆる粟島の逢はぬ—我 (わ) に寄そる児 (こ) ら(=ワタシト噂サレテイルアノ娘ヨ)」〈万・三一六七〉
[補説]古くは
2の
逆接の
意味で使われていたが、平安時代以降、「ゆえ」に引かれ、
1の
意味が生じた。なお
古語では、
1・
2の
意味で格助詞「に」を伴った「ものゆえに」の形でも用いられる。現代語では
順接の
意味しかなく、それも
書簡など、硬い文語的表現に用いられる。