・・・彼はこうしたやんちゃ者の渦巻の間を、言葉どおりに縫うように歩きながら、しきりに急いだ。 眼ざして来た家から一町ほどの手前まで来た時、彼はふと自分の周囲にもやもやとからみつくような子供たちの群れから、すかんと静かな所に歩み出たように思って・・・ 有島武郎 「卑怯者」
・・・子馬が生まれて三日ぐらいだという場面で、母馬の乳をしゃぶりながらかんしゃくを起して親の足をぽんぽんける、そのやんちゃぶりや、また、けられても平気ですましている母の態度や、実に涙が出るほどかわいくおもしろい真実味があふれている。 悍馬を慣・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・左の端から五人目のおどり子が、踊りながら頻りに此方を見、ふっとしなをする眼元を此方からも見なおしたら、それが桃龍であった。やんちゃな彼女が、さも尤もらしく桜の枝を上げたり下げたりしているのがおかしく、彼等はひとりでに笑えた。彼女も、舞台の上・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・ 御仙さんと私はこんな事を云って居た。段々夕方の暗さが深くなって来て部屋に電気がついた時、「家にかえりとうなってしもうた」 やんちゃのようなはな声で御仙さんはこんな事を云って私の方に身をすりよせて来た。「何うして?」「何・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
出典:青空文庫