[助動][え|え|ゆ|ゆる|ゆれ|○]《上代語》四段・ナ変・ラ変動詞の未然形に付く。
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1 受け身の意を表す。…れる。
「手束杖腰にたがねてか行けば人に厭 (いと) はえかく行けば人に憎まえ」〈万・八〇四〉
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2 可能の意を表す。…ことができる。
「日な曇り碓氷 (うすひ) の坂を越えしだに妹 (いも) が恋ひしく忘らえぬかも」〈万・四四〇七〉
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3 自発の意を表す。自然に…となる。→らゆ
「大君の継ぎて見 (め) すらし高円 (たかまと) の野辺見るごとに音 (ね) のみし泣かゆ」〈万・四五一〇〉
[補説]「る」に
先行する助動詞。
2の
意味で用いられるときは、打消しの語を伴い、不可能の意を表すことが多い。平安時代以降は「る」が使われたが、「聞かゆ」「思はゆ」などは音変化して一語化し、「聞こゆ」「おもほゆ」(さらに転じて「おぼゆ」)の形で用いられた。平安時代以降では、連体詞「あらゆる」「いわゆる」などに連体形「ゆる」の形をとどめている。