・・・ 寿子は大阪で行われた予選で第一位を占めた。庄之助は、旅費を工面すると、寿子を連れて上京した。 コンクールの課題はコレリー作の「ラフォリア」であった。 コンクールを受けた連中はいずれもうやうやしく審査員に頭を下げ、そして両足をそ・・・ 織田作之助 「道なき道」
・・・への候補者としての予選に堪えたものである。さて試みにその一つを取ってこれを前句に並列してよくよくながめてみる、するとそれは多くの場合にたいていはあまりに付き過ぎたものになっていることを発見するのが常である。これはむしろ当然なことである。私は・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
私のところへ送付された十数篇の応募原稿の中から、左の四篇を予選にのこして回覧した。予選には洩れたが、何かの意味で書き直したら作者の勉強になるだろうと考えられた作品にはそれぞれ寸評を加えて原稿を送りかえした。 今回は、大・・・ 宮本百合子 「小説の選を終えて」
予選をとおった十八篇の原稿が回されてきた。そのなかでは「電池」が一番すぐれている。落付きをもった筆で、いきいきと今日の学童の生活雰囲気、その間におこる小事件が描かれ、歪んだ苦しい社会相もそのかげに映しだされている。はじめ学・・・ 宮本百合子 「選評」
私が予選をうけもった十数篇の中でもこの位真情にあふれたのはなかった。 徳永の云っているとおり、もっと高い芸術化が必要であることも分るが、作者の力で今それは不可能であり、これはこのままよいところを買ってよまれ、それでやは・・・ 宮本百合子 「入選小説「新聞配達夫」について」
四十篇の原稿のなかから新日本文学会の書記局で予選された二十篇をよんだ。そのどれもが、それぞれかかれた環境においてのねうちをもっていて、等級をつけるのがむずかしかった。同時にそのことはとびぬけた作品はなかったことも意味し結局・・・ 宮本百合子 「『労働戦線』小説選後評」
出典:青空文庫