・・・ 一、青山への引越し、そのための感情 一、その大晦日 一、春 三月 福井より老父来、自分の心持。 前後のいきさつ、A、「今月は伸子が二つも三つも小説を書いたから大変やりくりに都合がいい」 三宅坂、赤坂見つけの桜 大正・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・ 自分の為に、きっさきを折られて、折角の楽しい予想が裏切られたかと思うと、私は、七十になった老父の為に相すまなく感じた。 十六年も別れて居た息子だ。生きて居るうちに、又とは会われまいと覚悟さえした息子だ。其が、思いがけない時に戻って・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ 中国の歴史がうつりかわるにつれて揚子江沿岸の軍閥が擡頭して、白人の事業を破滅に導き、それがやがて辛じて老父の屍を葬る二代目イーベンをせき立てて宜昌から遁走させる「偉大なスローガン」の怒号と高まって来るまで、作者は身についている揚子江航・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・野老は小生の老父で、安政三年すなわち一八五六年生まれ、取って六十九になる。小生は子供の時分この父を尊敬した。年頃になるとしばしば叱られた関係もあって小生の方で反抗心を抱いていたが二十五、六を過ぎてから再び尊敬することを覚えた。思想が古いとか・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫