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・・・事おわして、お召とあれば、水はもとより、自在のわっぱ。電火、地火、劫火、敵火、爆火、手一つでも消しますでしゅ、ごめん。」 とばかり、ひょうと飛んだ。ひょう、ひょう。 翁が、ふたふたと手を拍いて、笑い、笑い、「漁師町は行水時よ・・・
泉鏡花
「貝の穴に河童の居る事」
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・・・「その逃げたというのは十二三の小わっぱじゃろう。それならわしが知っておる」 三郎は驚いて声の主を見た。父の山椒大夫に見まごうような親爺で、この寺の鐘楼守である。親爺は詞を続いで言った。「そのわっぱはな、わしが午ごろ鐘楼から見ておると、築・・・
森鴎外
「山椒大夫」