・・・ From Annette & Sylvie “Annette felt that, alone, she was incomplete; incomplete in mind, body and heart.”・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・“I know it is one not liable to take infection”とある。 頼られる人というのは、こう云うのだ、と思う。理解はあるが、地につき Matter of Fact な、自分の生活を支配されな・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・この唐獅子は、その女のひととつき合のある幾軒もの家にあるのだろうと思うが、牡の方はその口をわんぐりと開いていることで見わけるのだそうだ。ところがこうやってしげしげその顔を眺めていると、豪魁そうに舌まで見せて口をかっと開いている牡の方が人のい・・・ 宮本百合子 「机の上のもの」
・・・青いたたみを見つめながら斯う云うのを、「うまい事云うてなはる、そんな事云わんと教えてちょうだい」こんな事をみんなから云われて私はなるたけ奇麗なところところを選んで話した、「あんたは話しが上手やさかい――ほんまに目の前に見えるようや、そう・・・ 宮本百合子 「ひな勇はん」
・・・獄中にて西教に傾きたりといえば、彼コルシカ人の「ワンデツタ」に似たる我邦復讐の事、いま奈何におもうらん。されど其母殺したりという人は、安き心もあらぬなるべし。きょうは女郎花、桔梗など折来たりて、再び瓶にさしぬ。 二十五日、法科大学の学生・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・獄中にて西教に傾きたりといえば、彼コルシカ人の「ワンデツタ」に似たる我邦復讐の事、いま奈何におもうらん。されど其母殺したりという人は、安き心もあらぬなるべし。きょうは女郎花、桔梗など折来たりて、再び瓶にさしぬ。 二十五日、法科大学の学生・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・若し方今のありさまにて、傾蓋の交はかかる所にて求むべしといわばわれ又何をかいわん。停車場は蘆葦人長の中に立てり。車のいずるにつれて、蘆の葉まばらになりて桔梗の紫なる、女郎花の黄なる、芒花の赤き、まだ深き霧の中に見ゆ。蝶一つ二つ翅重げに飛べり・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・そして、高く「わん、わん。」と吠えながら女の子の足元へ突進した。女の子は恐わそうな顔をして灸の頭を強く叩いた。灸はくるりとひっくり返った。「エヘエヘエヘエヘ。」とまた女の子は笑い出した。 すると、灸はそのままひっくり返りながら廊下へ・・・ 横光利一 「赤い着物」
・・・裾がまくれて白い小さな尻が、「ワン、ワン。」と吠えながら少しずつ下がっていった。「エヘエヘエヘエヘ。」 女の子は腹を波打たして笑い出した。二、三段ほど下りたときであった。突然、灸の尻は撃たれた鳥のように階段の下まで転った。「エヘ・・・ 横光利一 「赤い着物」
・・・裾がまくれて白い小さな尻が、「ワン、ワン。」と吠えながら少しずつ下がっていった。「エヘエヘエヘエヘ。」 女の子は腹を波打たして笑い出した。二、三段ほど下りたときであった。突然、灸の尻は撃たれた鳥のように階段の下まで転った。「エヘ・・・ 横光利一 「赤い着物」
出典:青空文庫