・・・その時イブリ アイヌが上京「私のお友達がね、わざと、『あすこに居るのがアイヌですか』ときいたら『ええあれが北海道で、木の根や草の根を掘ってたべて居るアイヌという気の毒な人たちです』と云ったんですって。だから、私行かないでよかったよ」・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・北海道で、荷馬車のうしろへ口繩をいわいつけた馬にのってアイヌ村を巡った時、私の帯の間にはこの時計が入っていた。 ニューヨークの寄宿舎では豌豆がちの献立であったから腹がすいて困った。その時、デスクの上で何時かしらと眺めるのも、その時計であ・・・ 宮本百合子 「時計」
・・・民族的滅亡に追いこまれているアイヌのことを書きたいと思って北海道へ行った。三月から八月まであっちこっちアイヌ村を歩いた。八月に父が札幌へ用事で来て、一緒に帰る汽車の中でアメリカへ出かけるがついてこないか、と言った。行く気になった。九・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 民族文字をもっていないアイヌには、こういう伝説がある。昔、アイヌ族が繁栄していた時代には、アイヌも立派な民族文字をもっていた。ところが、アイヌの住んでいた日本へ侵略して来た民族が、字をしまっておいた唐びつを掠奪した。そして、アイヌはこ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫