・・・またこのコハシあるいはコフジに相当するものと思われる類似の楽器の類似の名前がヨーロッパ、アジア、アフリカ、南洋のところどころに散在しているのが目につく。たとえばリュート類似の弦楽器として概括さるべきものに、トルコのコプズ、ルーマニアのコブサ・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・たとえばあの厖大なアフリカ大陸のどの部分にこれだけの気候の多様な分化が認められるであろうかを想像してみるといいと思う。 温帯の特徴は季節の年週期である。熱帯ではわれわれの考えるような季節という概念のほとんど成立しない土地が多い。南洋では・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・それがために暗黒アフリカの真只中にロンドン製品の包紙がちらばるようなことになる。提燈とネオン燈とが衝突することになる。それが騒動のもとになるのである。 こういう騒動をなくするにはあらゆる交通機関をなくしてしまうか、ただしはこれらの機関を・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・その後教授が半ばはその研究の資料を得るために半ばはこの自分を追跡する暗影を振り落とすためにアフリカに渡ってヘルワンの観測所の屋上で深夜にただ一人黄道光の観測をしていた際など、思いもかけぬ砂漠の暗やみから自分を狙撃せんとするもののあることを感・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
・・・ ベコニア、レッキスの一種に、これが人間の顔なら焼けどの瘢痕かと思われるような斑紋のあるのがある。やけどと思って見るとぞっとするくらいであるがレッキスとして見れば実に美しい。 アフリカの蛮人でくちびるを鐃にょうばちのように変形させて・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・もっともアフリカ内地へでも行けば、今でも、うっかり国境へ入り込んで視察でもしていたというだけでもすぐ拘禁され、場合によると命があぶない所もあるかもしれない。 これらの事実の関係ははなはだ錯綜していて、考えても考えても、考えが隠れん坊をし・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・アツレキ三十一年七月一日夜、表、アフリカ、コンゴオの林中の空地に於て故なくして擅に出現、舞踏中の土地人を恐怖散乱せしめたる件。」「よろしい、わかった。」とネネムは云いました。「姓名年齢その通りに相違ないか。」「へい。その通りです・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・わたくしはあすアフリカへ行く牧師の娘でございます。」 少女は、ふだんの透きとおる声もどこかへ行って、しわがれた声を風に半分とられながら叫ぶ。 マリヴロンは、うっとり西の碧いそらをながめていた大きな碧い瞳を、そっちへ向けてすばやく楽譜・・・ 宮沢賢治 「マリヴロンと少女」
・・・一九四一年十一月より五ヵ月ばかり、連合軍側の戦時特派員という資格で、アフリカ、近東、ソヴェト同盟、インド、中国を訪問し、ファシズム、ナチズムに対して民主主義をまもろうとする国々のたたかいの姿を報道した。「ポーランドに生れ、フランスに眠るわが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 第二次世界大戦ののち、アジアとアフリカの民族は、こののろわしい関係を変更するために立ちました。中国の人々が、日本その他の国の帝国主義を排除して中華人民共和国となったばかりではありません。耐えがたい隷属の生活であればこそ、世界平和と民族・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
出典:青空文庫