・・・ アルゼンチンの国際ペンクラブの大会に藤村氏が出席したからには、能うかぎり進歩的効果のあげられることを、私たちはまじり気ない心持で希望している。柿本人麿の和歌を記念碑に刻んで来ることも一つの趣であろう。けれども、藤村氏は、どういう好尚か・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ 国際ペンクラブ第十四回大会は、この年九月五日から十日間、アルゼンチン首府、ブェノスアイレスに開催され、日本からはじめて島崎藤村、有島生馬の二氏が代表として出席した。大会は、国際事情の複雑な背景を負うた。同じ六月ロンドンで第二回会議を持・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 日本の現実は多難であり、その多難の性質は、これまでの生涯において芸術家藤村の経験したどの時代にもなかったものである。アルゼンチンへ行き、そしてかえり、今日の苦しい世界を通って来た老藤村が、果してどのように洗われた感覚をもって、日本の自・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
出典:青空文庫