・・・ 神によって奇蹟は現わるると僧侶達は申してじゃ、 己を信じて己の力を祈って進んだ時にばかり驚くべき奇蹟は現れるものじゃ、神の御子じゃと申いて居るイエスは深く自分を御信じなされた。 己を深く信じて行われた事は奇蹟となって現れ水を酒・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・憲法の基本的人権の最も煮つめられた表現として、イエスかノーかをはっきり区別して自覚して生きる覚悟が必要である。このたび廃止された勅語の文章をみてわかるように、日本の権力者の文字の使いかたに対する感覚の手のこんでいることは、天皇制の官僚主義が・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ クリスマスそのものが、誰の降誕祭かと云えばイエス・キリストで、眼の丸かった赤坊ウォロージャの誕生日ではない。ロシア語はろくに読めないが、国立出版所で插画が面白いから買った本が一冊ある。題は「聖書についての愉快な物語」。第一頁をやっとこ・・・ 宮本百合子 「モスクワの姿」
・・・彼はそれに力を得てイエスの復活を説き立てる。哲学者は急に熱心になって霊魂不滅の信仰が迷妄に過ぎないこと、この迷妄を打破しなければ人間の幸福は得られないことを説いて彼を反駁する。彼は全能の造物主を恐れないのかときく。哲学者はこの世界が元子の離・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・釈尊やイエスはこれを解いて、多くの精霊を救う。この救われたる衆生が真の人生を現わしたか。救われずして地獄の九圏の中に阿鼻叫喚しているはずの、たとえば歴山大王や奈翁一世のごとき人間がかえって人生究竟の地を示したか。これは未決問題である。宗教の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫