・・・あたかもエジプトより遁れ出でしイスラエルの民が一部の失敗のゆえをもってモーセを責めたと同然でありました。しかし神はモーセの祈願を聴きたまいしがごとくにダルガスの心の叫びをも聴きたまいました。黙示は今度は彼に臨まずして彼の子に臨みました、彼の・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・なんであの人が、イスラエルの王なものか。馬鹿な弟子どもは、あの人を神の御子だと信じていて、そうして神の国の福音とかいうものを、あの人から伝え聞いては、浅間しくも、欣喜雀躍している。今にがっかりするのが、私にはわかっています。おのれを高うする・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・ その相手の天使からイスラエルという名前をもらって、そうしてびっこを引きながら歩いて行ったというくだりがあったようである。その「相撲」がいったいどんなふうの相撲であったかさっぱりわからない。しかし、ヘブライ語の相撲という言葉の根幹を成す・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・ ひたと我下にある大地ああ、よい 初夏よ私は 母の懐 野天に帰り心安らかに生命の滋液を吸う胡坐を組み只管イスラエルの民のように父なる天に溶け入るのだ。 文明人可笑しな 文明人何故 あの人・・・ 宮本百合子 「五月の空」
出典:青空文庫