・・・ 習字と漢籍の素読と武芸とだけで固めた吾等の父祖の教育の膳立ては、ともかくも一つのイデオロギーに統一された、筋の通り切ったものであった。明治大正を経た昭和時代の教育のプログラムはそれに比べてたしかにレビュー式である。盛り沢山の刺戟はある・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・四五年以上も経過してから、日本において、一つの急進的な性関係のタイプとして、イデオロギー的にコロンタイズムが流布したのには、またそれだけの社会的必然があったと思われる。 いわゆる、マルクス・ボーイ、エンゲルス・ガールという名ができたほど・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ ファシズムが、イデオロギーの面でも、左からまわってやってきているという例は、猪木正道氏、渡辺慧氏などという新型のジャーナリズム流行児の出現にも注目されます。 過去十数年にわたってわたしたち日本の人民は、正しい社会科学の本もよめなか・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・という子供のイデオロギー的な言葉よりさきに、校長、教頭などが金持、地主、官吏の子供らばかりをチヤホヤし、その親に平身低頭し、自身の地位の安全のためにこびる日常の現実に対して素朴な、しかし正当な軽蔑と憤りとを感じることから始る例が多い。 ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・それこそ、階級人としての精神――肉体あるイデオロギーの成長のモメントである。ところが、かりに、その人が労働者であり、組合員であり、また他の組織に属しているという条件から、その多忙な活動について、むずかしく考えることなんかいらないんだ、云われ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ 政治の優位性の問題は、今日まで四年間の苦しい経験によって、イデオロギーの問題から、創作の現実過程、評価の実際の基礎となってきた。プロレタリア文学運動の初期に、芸術と政治・政治の優位性が提起された時代には、政治の優位性の素朴な理解は、直・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 又、恋愛はひどく、その人の程度=イデオロギー的にも、性格的にも=を示すものであります。何とか彼とか、偉そうなこと、つよそうなこと、階級的そうなことを云っても、対手の女を見ると、その男の非公式な部分、書いてない部分が露出している。 ・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・一定のイデオロギーに対する人間的弱さ、箇性の再発見、インテリゲンツィア・小市民としての出生への再帰の欲望などが内的対立として分裂の形で作品にあらわれ、傷いた階級的良心の敏感さは、嘗てその良心の故に公式的であったものが今や自虐的な方向への拍車・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・というものには、「民主主義のためのイデオロギー」として「霊感的民主主義」を必要として「かつて軍隊が闘い得ず、政治家が思いも及ばざるイデオロギーの高度武装をせよ」と宣言している。そしてこの道徳高度武装内容をシューマン外相は、はっきり「経済分野・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ この座談会ではイデオロギー批評とその他の批評、作家的批評とが二様にわけてつかわれた。主として創作上の技術などについて追求しようとする作品の見かたがイデオロギー的でない、作家の役に立つ批評としていわれている。しかし会話のやりとりの間では・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
出典:青空文庫