・・・このエキゾチックな貴族臭い雰囲気に浸りながら霞ガ関を下りると、その頃練兵場であった日比谷の原を隔てて鹿鳴館の白い壁からオーケストラの美くしい旋律が行人を誘って文明の微醺を与えた。今なら文部省に睨まれ教育界から顰蹙される頗る放胆な自由恋愛説が・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・は名前からしてハイカラだが、店そのものもエキゾチックな建築で、装飾もへんにモダーンだから、まるで彼に相応わしくない。赤暖簾のかかった五銭喫茶店へはいればしっくりと似合う彼が、そんな店へ行くのにはむろん理由がなくてはかなわぬ。女だ。「カスタニ・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・ 従って、髪も兵古帯にふさわしくお下げにして、前髪を垂らしているせいか、ふと下町娘のようであり、またエキゾチックなやるせなさもある。 昔はやった「宵闇せまれば悩みは果てなし……」という歌にも似た女だと、うっかり彼女に言い寄って、ひど・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・スマラグド色の眼と石竹色の唇をもつこの雄猫の風貌にはどこかエキゾチックな趣がある。 死んだ白猫の母は宅の飼猫で白に雉毛の斑点を多分にもっていたが、ことによると前の白猫と今度の「白」とは父親がおなじであるか、ことによると「白」が「ボーヤ」・・・ 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・ワグナーの歌劇やハウプトマン、ズーデルマンなどの芝居などに親しんでいた当時の自分にはレビューというものは結局ただエキゾチックな玩具箱を引っくり返したようなものに過ぎなかった。 そんな訳であったから、後にアメリカに渡ったときも、レビューな・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・華美でエキゾチックで、ロマンチシズムの真骨頂のような作家的なゴーチェの文章を、バルザックが単純に上手いと感歎したというところにも、まざまざとバルザックが美の内容について錯雑した感受性をもっていたことが覗われるのである。 十九世紀とい・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 説明するまでもなくエキゾチックだということは、ある民族の自然的環境、伝統的風俗習慣が一面的に誇示されることを意味する。従って、ニッポンは中国と、中国はアメリカと違えば違うほどいい。しかも民族的な違いそのものを決定的なアルファとし、オメ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫