・・・ Black and White ばかりでございますが、……」 僕は曹達水の中にウイスキイを入れ、黙って一口ずつ飲みはじめた。僕の鄰には新聞記者らしい三十前後の男が二人何か小声に話していた。のみならず仏蘭西語を使っていた。僕は彼等に背中・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・それならば今日生徒に教えた、De gustibus non est Disputandum である。蓼食う虫も好き好きである。実験したければして見るが好い。――保吉はそう思いながら、窓の下の乞食を眺めていた。 主計官はしばらく黙っていた・・・ 芥川竜之介 「保吉の手帳から」
・・・Our birth is but asleep and forgetting. この句の通りです。僕等は生れてこの天地の間に来る、無我無心の小児の時から種々な事に出遇う、毎日太陽を見る、毎夜星を仰ぐ、ここに於てかこの不可思議・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・Full soon thy soul shall have her earthly freight,And custom lie upon thee with a weight,Heavy as frost, and dee・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・して『自然は決して彼を愛せし者に背かざりし』の句のごとき、そして“Therefore let the moonShine on thee in thy solitary walk;And let the misty mo・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・rs.Schopenhauer : Die Welt als Wille und Vorstellung.Stendhal : De l'amour.Russell : Marriage and morals.Ellen K・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・すぐ眼をふせて、鼻眼鏡を右手で軽くおさえ、If it is, then it shows great promise and not only this, but shows some brain behind it. と一語ずつ区切っては・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・ホップ、ステップ、エンド、ジャンプなんて飛び方でなくて、ほんのワンステップで、からりと春になってしまうのねえ。あんなに深く積っていた雪も、あっと思うまもなく消えてしまって、ほんとうに不思議で、おそろしいくらいだったわ。あたしは、もう十年も津・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・田中寛二の、Man and Apes. 真宗在家勤行集。馬鹿と面罵するより他に仕様のなかった男、エリオットの、文学論集をわざと骨折って読み、伊東静雄の詩集、「わがひとに与ふる哀歌。」を保田与重郎が送ってくれ、わがひととは、私のことだときめて・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・それが映画ではハッピー・エンドになっている。たぶんこうしなければ一般観客のうけが悪いからであろう。しかしこのことは映画と小説との区別に関して一つの根本的な問題を暗示する。 小説では忠犬を「殺す」ほうが得策であるのに映画では殺さないほうが・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
出典:青空文庫