・・・それは何とか言われたのに答えた All right と云う英語だった。「オオル・ライト」?――僕はいつかこの対話の意味を正確に掴もうとあせっていた。「オオル・ライト」? 「オオル・ライト」? 何が一体オオル・ライトなのであろう? 僕の部・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・ 雑誌社へきけば判るだろうと思い、文芸春秋社へ行き、オール読物の編輯をしているSという友人を訪ねると、Sはちょうど電話を掛けているところだった。「もしもし、こちらは文芸春秋のSですが、武田さん……そう、武麟さんの居所知りませんか。え・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・「そりゃ奥さんもいいでしょうが、たまには小股の切れ上った年増の濃厚なところも味ってみるもんですよ。オールサービスべたモーション。すすり泣くオールトーキ」と歌うように言って、「――ショートタイムで帰った客はないんだから」 色の蒼白・・・ 織田作之助 「世相」
・・・もないのに、ただ、台所から酒を追放したい気持から、がぶがぶ呑んで、呑みほしてしまうばかりで、常住、少量の酒を家に備えて、機に臨んで、ちょっと呑むという落ちつき澄ました芸は、できないのであるから、自然、All or Nothing の流儀で、・・・ 太宰治 「酒ぎらい」
・・・と言いながら危い足どりでその舟に乗り込み、「ちゃんとオールもございます。沼を一まわりして来るぜ。」騎虎の勢いである。「僕も乗ろう。」動きはじめたボートに、ひらりと父が飛び乗った。「光栄です。」と勝治が言って、ピチャとオールで水面をた・・・ 太宰治 「花火」
・・・ 隣の大将が食卓でオール・ドゥーヴルを取ってから上目で給仕の女中の顔をじろりと見る、あの挙動もやはり「生きてはたらきかける」ものをもっている。 生きているというのはつまり自然の真の一相の示揚された表情があるということであろう。こうい・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・I say ! Herr Meister ! Far away, far away ! One dollar, all dive ! などと言っているらしい。自分はどうしても銭をなげる気になれなかった。 船が出る時桟橋に立った見送りの一・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・our country was still in its infant stage under the care of its foster-fathers, among whom we especially mention Prof. K・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・ 柔い色のオール・バックの髪や、芸術観賞家らしい眼付が、雑然とした宿屋の周囲と、如何にも不調和に見えたのである。始め、彼はAを思い出さないように見えた。何となく知ろうと努め、一方用心しているように感ぜられ、自分の私かな期待を裏切って、初・・・ 宮本百合子 「思い出すこと」
・・・はっと気がついたら、茶の間で盛にオテテコテンテン、と陽気にオールゴールが鳴って居るのでびっくりした。家の目醒しは、引越し祝にN氏から贈られたもので、普通の目醒し時計のようにジジジジとただやかましくなるのではない。時間になると粤調、茉莉花とい・・・ 宮本百合子 「木蔭の椽」
出典:青空文庫