・・・という政治的キャバレーをひらいて、おなじ名の諷刺劇を上演したり、娯楽と宣伝とをかねた政治的集会を催し、演劇的才能と行動性とを溌剌と発揮して活動しはじめた。 ところが二月二十七日の夜、ドイツ国会放火事件がおこった。真の犯人はナチスであるが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・今思えば、その声も歌詞もキャバレーで唄われたようなものであったろう。更に思えば、当時父の持って来たレコードもどちらかと云えばごく通俗のものであったと考えられる。オペラのものやシムフォニーのまとまったものはなかったように思われる。 程なく・・・ 宮本百合子 「きのうときょう」
・・・黒字どころか、おしつまる年の瀬とともに、金のあるふところ、金のないふところの差別はまざまざとして、大晦日の新聞は、何と報道していたでしょう。キャバレーの床にシャンペンが流れ、高価な贅沢品はとぶように売れているのに、生活必需品の売れあしは、き・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・高松宮が大阪で社会見学をした――と云ってもキャバレーやバーめぐりであるが、どたばたキャーキャーの記事。こういう記事は、いまのジャーナリズムで新版水戸黄門膝くり毛めいた効果をもっている。日本の人々の心に過去の幻のかげとしてのこっている天皇や宮・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・日本のきょうの社会ではヤミのシャンパンはメチールをまぜてキャバレーの床に流れても、つつましい共稼ぎの若い夫婦の人生を清潔に、たのしくさせるカフェテリヤもなければ、オートマットもない。きょう、やかましい産児制限のことも、こうして、住む家をもた・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫