・・・保吉は横目を使いながら、ちょっとその本を覗きこんだ、Essai sur les ……あとは何だか判然しない。しかし内容はともかくも、紙の黄ばんだ、活字の細かい、とうてい新聞を読むようには読めそうもない代物である。 保吉はこの宣教師に軽い・・・ 芥川竜之介 「少年」
・・・その初の一節に、Sur l'tang endormi palpitent les roseaux.Et l'on entend passer en subites bouffes,Comme le vol craintif ・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・ただその頃私は純粋経験という考を中心として考えていたので、 Sur les donnes immdiates de la conscience.[『意識に直接与えられているものについての試論』]という書名に誘われたのである。しかし最初にベル・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・二十世紀に入ってから世界の文学は、絶えず自身を新しく生れかわらそうとして七転八倒しつづけて来たが、その意味では第一次大戦後におこったシュール・リアリズムさえも、古い資本主義社会の機能のもとで苦しむ小市民の魂の反抗の影絵でしかなかった。社会主・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・ 私小説的リアリズムを否定したからと云って、いきなりシュール・リアリズムと社会主義的リアリズムとが対決をもとめられるという現実もあり得まい。社会主義的リアリズムは、度のくるった近眼鏡のように一定の距離をもって遠くにあるものを目まいのする・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・またシュールの画家岡本太郎氏のように、十五六歳からの十余年をパリで生活して、日本へかえるとすぐ頭を丸刈りにされて侵略戦争にうちこまれた人の心と体の経験には、どんな深い裂けめが開かれたことだろう。その裂けめから彼の人間性に反射するのは何の思い・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ シュールの画家達が社会的な感覚では動き出していても自分たちの手法から成長するめどが発見されていないようにみられます。きわめて興味あるこの問題は、どう展開されてゆくでしょう。〔一九四九年十二月〕・・・ 宮本百合子 「『美術運動』への答え」
・・・それは文学流派としてどのようなロマンティシズムでも、シュールでも、スリラーでも、とどのどんづまりのところでは、その手法で描かれた世界が、読者に実感としてうけいれられるリアルなものとして形象化し、かたちづくって行かなければならないという現実で・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・社会の全機構がその影響の下にあり、ガムランによって代表された軍事部門の内奥さえ、その軍人気質を情操として見た場合、殆ど哲学的に洗煉されて、いくらかシュール・リアリストがかってしまっている。古い果樹の、熟しすぎた果実として、フランスの文化伝統・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫