・・・そのような伝統がもし日本の文学にあると仮定しても、若いジェネレーションが守るべき伝統であろうか。過不足なき描写という約束を、なぜ疑わぬのだろう。いや「過不足なき」というが、果して日本の文学の人間描写にいかなる「過剰」があっただろうか。「即か・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・あんた達はとにかく思想に情熱を持っていたが、僕ら現在二十代のジェネレーションにはもう情熱がない。僕はほら地名や職業の名や数字を夥しく作品の中にばらまくでしょう。これはね、曖眛な思想や信ずるに足りない体系に代るものとして、これだけは信ずるに足・・・ 織田作之助 「世相」
・・・このような文学こそ、新しい近代小説への道に努力せんとしている僕らのジェネレーションを刺戟するもので、よしんば僕らがもっている日本的な文学教養は志賀さんや秋声の文学の方をサルトルよりも気品高しとするにせよ、僕はやはりサルトルをみなさんにすすめ・・・ 織田作之助 「猫と杓子について」
・・・新しい、全く新しい次のジェネレーションが、少しずつ少しずつ見えて来た。男爵は、胸が一ぱいになり、しばらくは口もきけない有様であった。「ありがとう。それは、いいことだ。いいことなんだ。僕は、君たちの出現を待っていたのです。好人物と言われて・・・ 太宰治 「花燭」
・・・ ここに越ゆべからざる太い、まっ黒な線がある。ジェネレーションが、舞台が、少しずつ廻っている。彼我相通ぜぬ厳粛な悲しみ、否、嗚咽さえ、私には感じられるのだ。われらは永い旅をした。せっぱつまり、旅の仮寝の枕元の一輪を、日本浪曼派と名づけて・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・このひけ目を取り返すには次のジェネレーションの自覚に期待するよりほかに全く望みはないように見える。 六 麦秋 だいぶ評判の映画であったらしいが、自分にはそれほどおもしろくなかった。それは畢竟、この映画には自分の求・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・thematical school of meteorology, a pleiades of able mathematicians have risen up among the younger generation of meteor・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・あの一文を若いジェネレーションは何と読んだであろうか。「夜明け前」が一つの記念碑的な作品であることに異議ない。七年間の労作に堪ゆる人間が、枯淡であろうとも思わないし、無計画であるとも思わない。同じ十月の『文芸』に中村光夫氏が短い藤村・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・あなたのように若いジェネレーションの息吹きがその作品の内に照りかえしてはいないのです。 いつだったか「若い息子」が発表された後の頃であったが、あなたはごく寛ろいだ雑談の間で、こういう意味のことを云われたことがありました。世間のひとはあの・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・その下から、自然発生的に、やがては次第に意識的に、次代のジェネレーションに生きついでゆこうとする要素と、同じ環境から生い立って、その善意のすべてにかかわらず様々の道をとおって壊滅を辿らなければならない者と、それらも大なり小なりの典型として描・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
出典:青空文庫