・・・だの「ジゴマ」だのって、見たくも無いものばかりやっているじゃありませんか。しまいには私も、これはもう縁がないもんだとさっぱりあきらめてしまったんです。それがあなた……」 ほかの連中が相手にならないもんだから、お徳は僕一人をつかまえて、し・・・ 芥川竜之介 「片恋」
・・・ 見張りで、ベルをガラン、ガランと振り始めた。吹雪の呻りとベルの音とが、妙に淋しくこんがらかって、流れて行った。 ジゴマ帽から、目と口と丈け出した五人の怪物見たいな坑夫たちは、ベルが急調になって来て、一度中絶するのを、耳を澄まし、肩・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・特務曹長「なるほど、ジゴマと書いてあります。」「おい、やれ。」特務曹長「実に立派であります。」大将「これはもっと立派だぞ。」特務曹長「これはどちらからお受けになりましたのでありますか。」大将「ベルギ戦役マイナス十五里進軍・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
出典:青空文庫