・・・ この昭和十三年の禁止の時は、当時まだ幾分の抵抗力と生気とを保っていたジャーナリズム、主として新聞が日本の文化全般の問題として、この暴圧をとりあげた。しかし、禁止のリストにのせられた作家・評論家たちの間に、統一された抗争は組み立てられな・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・林房雄や須井一などが一応プロレタリア文学の陣営に属すように見えつつ、実質においては非プロレタリア的な作品を量において多量生産し、しかもそれがブルジョア・ジャーナリズムにおいてもてはやされているのに対して、われわれが一々それを作品によって覆す・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 性の解放がジャーナリズムの上に誇張されているのに、現実の恋愛もたのしい結婚生活の可能もむずかしいために、街の女の生態は、かたぎの若い男や女の性感情にさえ動揺的な刺戟となっている。かたぎの娘と街の娘とをかぎる一本の線は、経済問題と性的好・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・自分のどんな感情のありようとこの映画の俳優の演技のどんな性質とが或は引き合い、或は撥き合うのかと、その両方から味ってそこにある関係への判断をも自分の心の世界の中のものとしてゆく、それを云うのだと思う。ジャーナリズムの上での批評家の批評のとお・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・という表現は、反動ジャーナリズムのこのむところだ。しかし民主的文学運動の実際をいくらかでも知っている人にとっては思いもそめないことである。作家がより高い達成のために謙そんであるということは、本質をゆがめた評価に屈伏することではない。〔一九四・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・問題がおこってから俄にローレンスの作品の社会的、文学的意味をジャーナリズムの上に語りはじめた同じ人たちが、出版のはじめから、「チャタレイ夫人の恋人」のバンドに刷られたアンケートが果して文学の問題であるかどうか考えることは出来なかったろうか。・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・この時代の後半にジャーナリズムに通用した作品は、決して率直にファシズムと戦争に対して抵抗を示すことができなかった。この目次では戦争協力と超国家主義の作家たちが登場していないとともに、こんにち新しいファシズムの力と闘ってゆくために皆が知らなけ・・・ 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・評論も、すえは何となししんみりして、最後のくだり一転は筆者がひとしおいとしく思っている心境小説の作家尾崎一雄を、ひいきしている故にたしなめるという前おきできめつける、歌舞伎ごのみの思い入れにおわった。ジャーナリズムの上に一年間も八方に向って・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
毎月いくつかのプロレタリア小説、ブルジョア小説が、いろいろな雑誌に発表される。 つづいて、新聞その他に文芸批評が現れる。この頃のブルジョア・ジャーナリズムは、例えば『朝日新聞』が今度やっていたように、文学についての専門・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・ 文学を愛し、文学をつくる人になる前に生活の必要と文学愛好の心からジャーナリズム関係に入る若い人は、みんな大抵幻滅を経験する。バルザックの「幻滅」とはちがった意味で。遠くから見て敬意を抱いていた芸術家たちが、ジャーナリストとして接触して・・・ 宮本百合子 「豪華版」
出典:青空文庫