・・・すなわち、この小説は、徹底的に事実そのままの資料に拠ったもので、しかも原作者はその事実発生したスキャンダルに決して他人ではなかった、という興味ある仮説を引き出すことが出来るのであります。更に明確にぶちまけるならば、この小品の原作者 HERB・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・自殺の虫の感染は、黒死病の三倍くらいに確実で、その波紋のひろがりは、王宮のスキャンダルの囁きよりも十倍くらい速かった。縄に石鹸を塗りつけるほどに、細心に安楽の往生を図ることについては、私も至極賛成であって、甥の医学生の言に依っても、縊死は、・・・ 太宰治 「狂言の神」
・・・家扶家従、部屋付き女中、料理人、せんたく女と順々にこれが伝わって行って、最後にはいよいよ引き上げて行くモーリスに、執念く追い迫るスキャンダルの悪魔のささやきのようなささやき声の「ナッシンバッタテーラ」が繰り返される。これはかなり印象的である・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・ただしいわゆる『第三面』として知られた notorious scandal のためにそこなわれてはいるが」とあった。この人のいう事がどこまで信用できるか私にはよくわからないが、ともかくも「第三面」は世界的の notoriety を保有してい・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・現閣僚はスキャンダルにつつまれている。当分の間日本の人民は、清廉潔白な内閣をもつことは困難であろうと予測している。日本の独占資本がより強力な独占資本の庇護のもとに自身の存在を維持しようとしているとき、その利益を代表する政権が、真に民主的であ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・でゾシチェンコがその猿に経験させたスキャンダルはだいたい想像される。レーニングラードの市民たちは、はじめ求めていた快活な爽やかなハァハァ笑いから、いつしかゾシチェンコごのみの、ゲラゲラ笑い、ヒヒヒヒ笑いに誘いこまれたのであったろう。 一・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫