・・・ けれ共相当の注意を無意識の裡に呼び起こされるほどセンチメンタルな言葉を洩して居た。 細い背の高い体と熱い様な光りの有る眼とを持って眼の上には長くて濃い□□(が開いて居た。 上っ皮のかすれた様な細い声は低く平らかに赤い小さな唇か・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・文学の仕事に転じて来た時、センチメンタルになり、人間の観方、文学的表現等では、非常に抵抗少く過去の文学的常套に伏するのは何故であろうか。こういう経歴の作家に通有な文学に於ける面白さが、やはりブルジョア文学の一部の作家がいう面白さと類似したも・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・その感傷が、当人達も自覚しない自然の力にも手伝われて、友達や教師にひどくセンチメンタルな手紙を書かせるようにもなるのでしょう。 そういう場合、異性の教師が、或る程度まで心理的な洞察力のある、人としてよい訓練を経て来た者なら互方の進んでゆ・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
出典:青空文庫