・・・即ちバチが、それこそテキ面だったのである。またあるとき、盲目の眼があいた。と、そのメクラは、島四国をめぐってさえ眼があくのならば、本四国をめぐったらどんなによいだろうと云った。ところが、メクラは本四国を上位においてそう云ったばかりに、開いた・・・ 黒島伝治 「海賊と遍路」
・・・と一人が評すると「ビステキの化石を食わせるぞ」と一人が云う。「造り花なら蘭麝でも焚き込めばなるまい」これは女の申し分だ。三人が三様の解釈をしたが、三様共すこぶる解しにくい。「珊瑚の枝は海の底、薬を飲んで毒を吐く軽薄の児」と言いか・・・ 夏目漱石 「一夜」
・・・僕のようなものがかかる問題を考えるのは全く天気のせいや「ビステキ」のせいではない天の然らしむるところだね。この国の文学美術がいかに盛大で、その盛大な文学美術がいかに国民の品性に感化を及ぼしつつあるか、この国の物質的開化がどのくらい進歩してそ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
出典:青空文庫