・・・それだけの場面を二十回以上も繰りかえしてテストしているのである。どうにも、おかしくなかった。大笑いどころか、男爵は、にがにがしくさえなった。日本の喜劇には、きまったように、こんな、大めしを食うところや、まんじゅうを十個もたべて目を白黒する場・・・ 太宰治 「花燭」
・・・ この想像のテストは前記の人工音合成の実験よりはずっと簡単である。すなわち、鳥の「モシモシカメヨ」と人間のそれとのレコードを分析し、比較するだけの手数でいずれとも決定されるからである。 こうした研究の結果いかんによっては、ほととぎす・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・しかし単なる理論のテストでなく、現象を精察する意味での実地的方面の研究はかえって少ないようであるが、わが国で地球物理の問題に関係して藤原博士や徳田博士の行なわれたいろいろの実験はこの意味においてきわめて興味の深い有益なものである。それからこ・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ ただ問題になるのはこの昇降機というもののメンタルテストの前に人間が二色に区別されることである。 何事でも人の寄る所へは押し寄せて行って群集を押し分けて先を争わないと気の済まない人と、そういう所はなるべく避けて少々の便宜は犠牲にして・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・ここにこそ具体的な自我と自意識の発展と崩壊のテストがある。もし、そんな年より相手に議論しても大人気ないと判断したのなら、それだけの価値しかもっていない対手と話すらしいあたりまえの口のききかたをしていてよい。大学教授であり、その人々の直接か間・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・彼の自若性、客観性はテストにかからなかった。それらの国々での社会生活は、彼のもちあわせた判断力を惑乱させるほど豊饒でないから。アメリカでシーモノフは、一個のソヴェト市民とし、一個の社会主義作家として、これまでのどこにおいても経験しなかったい・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・騎士物語の中には、夫である一人の騎士が、友達との張合いから、妻の貞操を賭物として、破廉恥な友人の道徳的なテストに可憐な妻をさらす物語が少くない。中世の女性達は女としての奇智の限りを尽して、非道な奪掠者と闘った。そして自分の愛の純潔と夫への忠・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・女学校を卒業したばかりの少女が、作品を発表されたということは、ほんとうに複雑な人間テストであったと思う。こういう早く咲いた花のような立場はそれからのちのほとんど十年間を自分のぐるりをとりかこむ環境とのたたかいにすごすことになった。自分に小説・・・ 宮本百合子 「私の青春時代」
出典:青空文庫