・・・や「デカメロン」を以てはじまる小説本来の面白さがあったとでもいうのか。脂っこい小説に飽いてお茶漬け小説でも書きたくなったというほど、日本の文学は栄養過多であろうか。 正倉院の御物が公開されると、何十万という人間が猫も杓子も満員の汽車・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・というので、毎日新聞がお前の妹のことをデカ/\と書いた。検事の求刑は山崎が三年、お前の妹が二年半、上田と大川は二年だった。それで、第一審の判決は大体の想像では、みんな半年位ずつ減って、上田と大川は執行猶予になるだろうということだった。上田の・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・外国でも遠くはデカメロンあたりから発して、近世では、メリメ、モオパスサン、ドオデエ、チェホフなんて、まあいろいろあるだろうが、日本では殊にこの技術が昔から発達していた国で、何々物語というもののほとんど全部がそれであったし、また近世では西鶴な・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・かの国の有名な画廊にある名画の複製や、アラビアンナイトとデカメロンの豪華版や、愛書家の涎を流しそうな、芸術のための芸術と思われる書物が並んでいて、これにはちょっと意外な感じもした。そのほかになかなか美しい人形や小箱なども陳列してあったが、い・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・「デカメロン」の本質はそういうものであった。 十九世紀の目ざましい科学の進歩は、人間の幸福について、それを可能にしまた不可能にする社会の条件を考慮に入れるべきことを知らせた。これは社会的に生きる人類の幸福を問題とする現実的な幸福探求の道・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ 智識階級の二十―三十代 リーベ すきな人 倉知の俊が農園でつかう ヤ、こいつはデカ・メロンだ、でかいメロンだ。 ○ケイオーの学生「あいつ赤電のくせに悠々し・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫