・・・の場合においても、たとえば三人の管理人が小高い所へ立って桜ん坊か何かつまんでは吐き出しながらトラクターの来るのをながめているところがある。下のほうからカメラを上向けに、対眼点を高くしてとったために三人の垂直線が互いに傾き合って天の一方に集中・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・丁度素晴らしい「トラクター」や「コンバイン」をつかって麦の収穫を終ったばかりのところである。ドイツからの労働者見学団の若い男女たちは、その収穫の壮大な仕事ぶりを見てきたばかりなので、片言のロシア語やあやしげな英語でさかんにその見事な様子につ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・ウラル地方はこのスウェルドロフスキーを中心として、СССРの大切な石炭生産地、農業用トラクター生産地だ。一九三〇年、アメリカのキャピタリストがウラルという名をきいて連想するのは、もう熊狩ではない。 灰色を帯びた柔かい水色の空。旧市街はそ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・日本型トラクターの能率は馬耕の二倍、人耕の十二倍で、しかも反当りの費用は人耕の四円五十三銭に比べて僅か一円九十五銭ですむ。 明日の農村の希望はまた生活の習慣や衛生条件の改善にある。共同炊事や托児所や診療施設など。若い農村の女性こそ青年た・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・ 果しない耕地にトラクターが進んでゆく。青葉の繁った木立ちのこっち側には集団牧場がみえる。楽し気な牛、馬、羊、年とった集団農場員が若いもの、孫のようなピオニェール等にかこまれて、働き、ラジオをきき、字をならっている。 鉄橋がある。遠・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ ソヴェト同盟の耕地に一台トラクターが運転されることは、直接集団化された農民に何割かの確実な収益増大を約束するばかりではない。トラクターと一緒に文化がやって来ている。「ギガント」から一時間ばかり汽車にのっかって行くと、「ウェルブリュ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・大きな西日が鋤をひっぱる馬の背とケシの花とを越えて静かに彼方の地平線に沈もうとする曠野に、耕作機械トラクターが響き出す。うねくる個人耕作の細い畦が消えて、そこに赤旗をかかげた農業機械ステーションを中心とする集団農場が現われた。 重工業の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・板がこいから空へつき出した起重機の頂に赤旗をひるがえしながら煉瓦、石灰の俵、トラクターの重いわだちがかたちをくずした泥の中で興味ぶかい未完成の姿を現している。 だが、モスクワそのものを、本当にソヴェトの首都にふさわしい社会主義都市に根柢・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・四十人の生徒が二年後はトラクター技師として働くために勉強中だが、なかに八人、女生徒がいる。みんな金属工場から志願し、選抜されて来ている連中だ。大柄な、頼もしい婦人青年同盟員たちだ。 寄宿舎を、やはり女で、政治的活動をやっている同志に案内・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・この一事は、ロシアのムジークを社会主義的生産の農業労働者にしたばかりではなかった。トラクターをのりこなす若者たちはタンクに苦労する必要がなかった。ソヴェト式に自分たちの仕事を分担し組織する能力と習慣とをもった農村出身者たちは、東ドイツの村落・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫