・・・これを想うと、今さらのように armer Thor の嘆が真実であることを感ずる。二 私はどうしたらよかろうか。私は一体どうして日々を送っているか。全くのその日暮し、その時勝負でやっているのだろうか。あながちそうでもないよう・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・そのことはアナトール・フランスやジイドの文学を見ただけでも明かである。デイトリッヒとボアイエとが演じた「沙漠の花園」はフランスのカソリック精神と人間の情熱とアフリカの沙漠とを結びつけた平凡な一つの作品であった。ラテン文化はアフリカを植民地化・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・ミスが、面白い変化物語と、アナトール・フランス風の話をした。変化物語、なかなか日本の土俗史的考証が細かで、一寸秋成じみた着想もあり、面白かった。 九時過Nさんと自動車で、自分林町へ廻る。離れにKと寝る。いろいろ話し、若い男がひとの妻君に・・・ 宮本百合子 「狐の姐さん」
・・・アナトール・フランスの言葉が引用されたり、愛とか、よき生活への理想とかが文句として存在してはいるけれども、なまのままの現実生活と、そこから創造されるものとしての芸術としてのリアリティーとの関係では、作者は実生活の運用のために芸術的表現をも使・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・ 小父貴にでもそれを云われたらともかく一応はふくれるにちがいない娘さんたちが、それと同じ本質のことを、アナトール・フランスの言葉というようなものを引用したらしく文学のように話されれば、何かちがった瞬きようをしてきくという心は、読者の・・・ 宮本百合子 「今日の読者の性格」
・・・アナトール・フランスの「赤い百合」でさえも、この作家の最良の収穫たらしめなかった。モーパッサンが、「脂肪の塊」と「女の一生」「水の上」の他の何で文学史の上に立っているだろう。自身のロマネスクなるものの源泉を、フランスの社交小説において、こん・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・アナトール・フランスの思想の発展のモメントが、この事件に連関していることを、近代フランス文学は少くともきまりわるがってはいない。そのドレフュス事件にしても、現に新聞があることやないことをかきたて一般の反感を挑撥していた当時は、セザンヌが、そ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫