・・・誌を持ち込んで、ジャン・ポール・サルトルの義眼めいた顔の近影を眺めている姿は、一体いかなる不逞なドラ猫に見えるであろうか。 ある大衆作家は「新婚ドライブ競争」というような題の小説を書くほどの神経の逞しさを持っていながら、座談会に出席する・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ その途端、一人の大男が、こそこそと、然しノッポの大股で、境内から姿を消してしまったが、その男はいわずと知れた郷士鷲塚佐太夫のドラ息子の、佐助であった。 佐助は、アバタ面のほかに人一倍強い自惚れを持っていた。 その証拠に、六・・・ 織田作之助 「猿飛佐助」
・・・』『アハハハハハばかを言ってる、ドラ寝るとしよう、皆さんごゆっくり』と、幸衛門の叔父さん歳よりも早く禿げし頭をなでながら内に入りぬ。『わたしも帰って戦争の夢でも見るかな』と、罪のない若旦那の起ちかかるを止めるように『戦争はまだ永・・・ 国木田独歩 「置土産」
・・・』『ハハハハハ』主人は快く笑って『しかしおいらアいくら逆上せても鉄道往生はご免だ。ドラ床の中で朝まで安楽成仏としようかな。今朝の野郎なんかまだ浮かばれねエでレールの上を迷ってるだろうよ。』『チョッ薄気味の悪イ! ねエもうこんなところ・・・ 国木田独歩 「郊外」
・・・ ああわが最愛の友よ(妹ドラ嬢を指、汝今われと共にこの清泉の岸に立つ、われは汝の声音中にわが昔日の心語を聞き、汝の驚喜して閃く所の眼光裡にわが昔日の快心を読むなり。ああ! われをしてしばしなりとも汝においてわが昔日を観取せしめよ、わが最・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・ ロザリーは、現代の女性が持ち得る最上の幸福を以て十年の間に、ハフ、ドラ、ベンジャミン三人の子供の母となりました。 勿論この間には、多少生活感情上の暗闘がなかった訳ではありませんが、彼女は、稀な美貌と事務的敏腕を兼備し、その上、著名・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫