・・・そのもっとも根本的な点は国際間の複雑な利害矛盾の調整は、封建的で、また資本主義的な強圧であるナチズムやファシズムでは、できなかったという事実である。もっと進歩した、もっと合理的な方法でなくては――ただ殺戮、侵略、武力では、国際間の問題は解決・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・そのうちで、戦闘員だったものは千五百万人、最低その三倍の非戦闘員が、空襲とナチスやファシストの強制収容所、地下の抗戦運動で殺害されている。日本の軍部は、太平洋戦争で百八十五万人を死なせた。全国には百八十万人の未亡人が飢餓線に生きている。千円・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・そこには、一九二七―三〇年のモスクワでないモスクワが描かれているし、反ナチの祖国戦争で、ソヴェトの人々が人類の平和のためにどれだけかけひきぬきの犠牲をいとわなかったか、その巨大な破壊とそこからの回復のためにいかに奮闘しているかということを、・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ところが、巴里の凱旋通をナチの軍隊が足並高く行進することとなって、世界は現世紀の一つの驚きの感情を経験した。どうして、フランスは敗れたのだろうか。この問いが、日本でもあらゆる人々の心に湧いたにちがいない。忽ち新聞に、フランスは文化の爛熟と頽・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・しかし、石原氏がナチの科学政策とソ連の科学政策とを質的に同一なものとして否定しておられるのは、何だか腑に落ちない。常識人の目に映るナチは、病的な民族主義の強調などによって、自身の文化、科学をも貧弱化せざるを得ない矛盾を露出している。石原氏が・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・たとえば、ドニェプルの大発電所は、第一次五ヵ年計画時代の全ソヴェト人にとってじつに愛着と誇りの象徴であったが、ナチス軍がドニェプル地区に侵略してくる危険が迫ったとき、大発電所はそれを建設した労働者の手によって破壊された。その記事を新聞でよん・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・そこへこの舞台にとって最もふさわしい野心と賢さと狂気とをもったヒットラーというオーストリアの軍曹がナチスという政党をひきいて現れた。地方的な小政党であったナチスを一九三三年の選挙で第一党にした背後の力は、国内では軍需生産企業の親玉たちと保守・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・プロレタリア文学運動の窒息させられたあと、反ナチの人民戦線運動が日本にもつたえられた。これは、ドイツの封建的残滓の上に発生した封建的独裁に抗し、近代民主主義の基本的人権を主張した運動であった。が、日本では、プロレタリア文学運動をうちこわした・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・国土が安全であったアメリカは、軍人でない生命の犠牲は数においてみなかった。ナチの虐殺にあったソヴェト、日本の虐殺をうけた中国、ドイツ、日本などは、その点で比べられない悲惨を経た。 横田喜三郎博士は、もっと興味のある事実をあげておられる。・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・そもペンクラブというものが、文筆にたずさわる人々の親睦機関から今日のように文化的により深い意味と活動とを行うようになったのは、ドイツでユダヤ系の作家、左翼作家を迫害して、ベルリン・ペンクラブを強奪してナチの宣伝に利用しようと企てたことからで・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
出典:青空文庫