・・・本やノートをおしまいなさい。」 そして教室中はしばらく机の蓋をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいでしたがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。二、活版所 ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・と言って、じぶんのノートをふところへしまってしまいました。その時教室に、ぱっと電燈がつきました。もう夕方だったのです。大博士が向こうで言いました。「いまや夕べははるかにきたり、拙講もまた全課をおえた。諸君のうちの希望者は、けだしいつ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・と叫んでそれからバタバタ、ノートを閉じました。ネネムもすっかり釣り込まれて、「ブラボオ。」と叫んで堅く堅く決心したように口を結びました。この時先生はやっとほんのすこうし笑って一段声を低くして云いました。「みなさん。これからすぐ卒業試・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・捜査のすすむにつれて三鷹の組合の副委員長をしている石井万治という人は嫌疑をかけられている書記長の自宅を訪問し、他所へつれて行って饗応し、ノートをひらいて、緊急秘密指令三百十一号、三百十八号というものをみせ、あなたのことについては骨を折るとい・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・手に入るだけの材料からノートをつくって、それをもってその夏福井県の田舎の村へ行った。わたしが一緒に暮していたひとの故郷がその村であった。農家にふさわしくない金ぴかの大仏壇が納められていた。七十歳だった老人は白髯をしごきながら炉ばたで三人の息・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・に没頭したのであったが、三ヵ月にあまるこの仕事への没頭――調べたり、ノートしたり、書いたりしてゆく過程で循環してつきない自家中毒をおこしていた精神活動の上に知らず知らず、やや健全な客観の習慣をとりもどすことが出来たのであった。翌年の秋から「・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・「灰色のノート」からはじまるこの長篇小説の主人公はジャックという少年である。「灰色のノート」では、宗教学校の偽善的な教育にあき足りない激しい性質のジャックの苦悩と、彼に対する周囲の誤解のみにくさが描かれている。「一九一四年夏」は、一昨年・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・原稿紙がなければ普通のノートで間に合わせられる。ひどい時には一枚ずつ質も色も形もちがう紙の上にだって書ける。私はそういう小説の原稿を見たことがある。『女工と農婦』という女のための雑誌がレーニングラードで出ていて、そこの編輯所を訪問したら、主・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・を読みながら、そのおりおり念頭に浮んで来た何冊かの本をノートしただけのこの短いメモを、本当に科学に通暁した人たちが見たらば、その貧弱さ、低さ、範囲の狭さを、どんなにおかしくまた憐れに思うことだろう。 私は全くへりくだった心持でいわば私た・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 二番目の弟は学期試験で、一人早く起き出し、食事をする部屋のテーブルの電燈の下でノートを読んでいた。すると、正面に当る廊下の両開きになっている扉の片方が細めにすーと開いて、そこから誰かの眼が内をのぞいた。弟は、書生さんが起しに来てくれた・・・ 宮本百合子 「からたち」
出典:青空文庫