・・・たくさんの蒸しパンが包まれているらしい清潔なハトロン紙の包みが、私の膝の上に載せられました。私は黙っていました。「あの、お昼につくったのですから、大丈夫だと思いますけど。それから、……これは、お赤飯です。それから、……これは、卵です。」・・・ 太宰治 「たずねびと」
・・・ 日本のあらゆる女性が手にもって暮して来た物指やテープをハトロン紙の上に走らせるばかりでなく社会の上に、わたしたちの人生とその建設のために使うことを知るようにならなければならないと思う。〔一九四七年十月〕・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ 好子は、型紙のつくりかたをやっているところで、ハトロン紙の隅で計算をしては物指で作図をしている。テーブルの上へ拡げた紙へ胸ごとのしかかる姿勢で好子はおだやかに云った「山田は時々戦死するかもしれないよと云うのよ。そんなとき、私、それ・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫