・・・の闊達おてんばな女、ハムレットの不幸な愛人としてのオフェリアなど、千変万化の女性があらわれている。 ところで、きょう私たちがこのシェークスピアの有名な傑作「オセロ」をみると、その女主人公デスデモーナの運命について、実に痛切に感じるものが・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 夕刻事務所から早く帰った日には、皆でテーブルを囲んで夕飯をたべ、後は談笑したり、音楽をきいたり、興に乗じると、昔ロンドンでアーヴィングが演ったハムレットの真似だと云って、芝居の真似をしたり、賑やかでした。喋っても、癇癪を起しても陽性で・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
・・・父がまだ出立しないうち、一夜本郷座でシェクスピアの「ハムレット」を川上音二郎一座が演ずるのを見物した。五つ位の娘であった私の茫漠とした記憶の裡に、暗くて睡い棧敷の桝からハッと目をさまして眺めた明るい舞台に、貞奴のオフェリアが白衣に裾まである・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・ それで貴方子供はちっとも親になつかない、 まるで自分達にはなれた事だと思って考えて見たってハムレット以上の悲劇なんです、 私達が書き表しにくいほど複雑した心理状態と悲しさがこもってますものねえ。 だれでもがよくこの頃は親達・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・有名なドン・キホーテとハムレットとの考察も、彼はそれを自身の現実に組みついて来る熾烈な積極的な要素の上に立つ懐疑として行ってはいないのである。 トルストイが、社会の矛盾の根源を人間の本能に帰して、当時のロシアの解放運動とそこに生き死・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・「ハムレット」のオフェリヤ。「マクベス」のマクベス夫人。「ベニスの商人」のポーシャ。「リア王」の三人の娘たち。「オセロ」のデスデモーナ。色とりどりの可憐さ、鮮やかな性格と情熱と才智とで、男の政治、経済の波瀾、権謀の中に交錯してゆく女の姿が描・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・夢を見ているように美しい、ハムレット太子の故郷、ヘルジンギヨオルから、スウェエデンの海岸まで、さっぱりした、住心地の好さそうな田舎家が、帯のように続いていて、それが田畑の緑に埋もれて、夢を見るように、海に覗いている。雨を催している日の空気は・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・ベルナアルの椿姫、カインツのロミオ、ムネのハムレットなどは幾度見ても飽かない、見るたびごとに新鮮な感興が起こる。しかるにデュウゼのは四五度以上同じ物を見ると感興が薄らいでしまう。デュウゼの芸には解すべからざる秘密がある。 バアルはこの秘・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫