・・・けれども、第一これらの人々が社会と文学とに階級を認めざるを得ない今日の現実に反して、能動精神というものを抽象化してこれも漠然たる一般社会性の上に強調したことは、折角若き時代のモラルを創らんとしつつ、パン種の入っていないパンをふくらがそうと焦・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・という本は、何かパン種のような本だと思う。この本には、読者にそれだけの熱意さえあれば、現代文化の最高水準における多種多様な勉強へ展開してゆく可能が蔵されているのである。十七世紀の新陸地発見時代のイスパニアの貨幣にはジブラルタルの図案が鋳出さ・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・のも打ち捨てた」十八歳の七月三日の記事に「M……別れをいいに来た。」云々。そして雨の中を展覧会へ行くまで二人の間に交された話ぶりを記しているのであるが、このMというのが、今日の映画の「恋人の日記」のパン種となったモウパッサンの頭字だろうか。・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫