・・・ まさに百パーセントの利用、活用である。「いいかい? たぶん大丈夫だと思うけどね、そこに乱暴な男がひとりいてね、もしそいつが腕を振り上げたら、君は軽くこう、取りおさえて下さい。なあに、弱いやつらしいんですがね。」 彼は、めっきり・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・このウイスキイは、そうだな、六〇パーセントくらいかな? まあ、普通だ。たいして強くない」と言って、またぐいと飲みほす。なんの風情も無い。 そうしてこんどは、彼が私に注いでくれて、それからまた彼自身の茶碗にもなみなみと一ぱい注いで、「・・・ 太宰治 「親友交歓」
・・・冬季三か月間、九十日のうちで、約六十九日、すなわち約七十七パーセントは雨か雪が降る勘定である。筒井氏の調査によると、冬季降雪の多い区域が、若狭越前から、近江の北半へ突き出て、V字形をなしている。そして、その最も南の先端が、美濃、近江、伊勢三・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・三百パーセントか四百パーセントの満腹である。からだの直径がどう見ても三四倍になっている。他の動物の組織でこんなに伸長されてそれで破裂しないものがあろうとはちょっと思われないようである。もっとも胎生動物の母胎の伸縮も同様な例としてあげられるか・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ そう云えば近頃世上で大分もてはやされる色々の社会的の問題に関する弁論や主張や宣伝中の一、二パーセント、あるいは二、三十パーセント、事によるともっと意外に大きいパーセントがやはり一種のシッタシズムの産物ではあるまいかという疑いが起った。・・・ 寺田寅彦 「鸚鵡のイズム」
・・・しかし事前におけるノルマルの鼓動数が書いてないから増加のパーセントはわからない。少しばかげてはいるが、とにかくも人間のテンペラメントを数字で代表させようという傾向を示すものとして興味があるであろう。 これらの例で明らかであるように、いわ・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・ことによると九十パーセントが間違いかもしれない。 いっそのこと、全部間違いばかりと事がらがきまればかえって楽であるが、困ったことには時にほんとうなことが交じるので全部捨てるわけにゆかないから始末が悪いのである。 われわれの目も時々わ・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・ 歴史に名を止めたような、えらい武人や学者のどれだけのパーセントが一種のドンキホーテでなかったか。現在眼前に栄えているえらい人達のうちにも、もしかしたら立派なドンキホーテが一人や二人はいるのではないか。そんなことを考えながら帝劇の玄関を・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・八重子はここで黙って百パーセントの売女としてのポーラになりきることによってこの悲劇を完成すべきではないかという気がしたのであった。 不平ばかり言ったようで作者にはすまないが、どうもこんなふうに感じたことは事実でいたし方がない。 二番・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・そういう寒い部屋で相対坐している主人に百パーセントの好意を感じようとするのは並々ならぬ意志の力を必要とするようである。 多くの家では玄関は家の日裏にあり北極にあたる。昼頃近くになっても霜柱の消えないような玄関の前に立って呼鈴を鳴らしても・・・ 寺田寅彦 「新年雑俎」
出典:青空文庫