・・・学生諸君はむしろ好運に選ばれたる青年であり、その故に生命とヒューマニティーと、理想社会について想い、夢見、たたかいに準備する義務があるのである。 さて私はかように夢と理想とを抱いて学窓にある、健やかなる青年として諸君を表象する。学業に勉・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ やがて、第一次ヨーロッパ大戦にまきこまれたジャックが、どういう風に国際的な資本主義経済の自己撞着と戦争の矛盾を発見し、彼のヒューマニティーに立って社会歴史の発展に対する情熱に献身するか、それは、わたしたちの前にまだ日本訳としてあらわれ・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・第一次大戦の前後に書かれた作品で、イギリスの人たちが、十九世紀からもちつづけて来た家庭、結婚についての形式的な習慣に、新しく深いヒューマニティーの光を射こんだ作品であった。保守的な宗教家として正統的なものの考えかたをしている老牧師の娘である・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ 現代の帝国主義の国家権力の実質が、よりゆたかなヒューマニティーの力の表現といえないのが現実ならば、わたしたち一人一人が「失うものはこの世の不幸しかない」平の人民の女であり男として生れたことを心からよろこび、評価してよいと思う。なぜなら・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・米国婦人が、不用な奢侈品に良人の体中の油汗を搾らせながら、祈祷の文句を誦し、人道の為に、彼女等が殆ど一人として云わない事はない Humanity の為に是非を喧しくするのが一種の常套であると共に、日本の現代の常套は女性の経済的独立と称し、職・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・とにかく、第一節において、ジイドは、心を傾けてソヴェトに開花している日常生活の幸福そうな明るさ、行き届いた文化的施設、どこの国においてよりも深く強くヒューマニティーを感じさせる人間と人間との接触、共感、民衆が享有している非常に長い青年期の高・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ソヴェト同盟の革命的な文学は、世界文学が包括するヒューマニティーの内容に、はっきりと、現代の歴史における労働者階級の意義と新しい能力の実証を加えたのであった。 第二次大戦は、ナチス・ドイツとファシズム・イタリー、日本の敗北を結果した。あ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・とだけかかれていて、問題がおこってからジャーナリズムの上に諸家がかかれているような、文学史的意義の評価、ヒューマニティーの問題としてローレンスがとらえた性のモメントは、二〇年前のヨーロッパの中流的偽善に何を投げたかという社会的意義などについ・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・ しかし、現代の世界のヒューマニティーの現実は、その芸術再現の方法を、社会主義リアリズムに発展させてゆかなければ、歴史の動きの中核と人間生活の具体的な関係を描き得ない時代に来ている。第二次世界大戦ののち――一九四五年からのちの世界とその・・・ 宮本百合子 「「道標」を書き終えて」
・・・三十数年昔の十一月のある日の彼が語ったよりも、更に深い日本への愛と情熱とをもって、日本のヒューマニティーの尊厳と日本の理性の確立のために語ったであろうと信じる。なぜなら、ここにこまごまとのべるまでもなく、こんにち日本の特権階級は、日本の民族・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
出典:青空文庫